東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1075号 判決
控訴人等は、右土地占有の権原につき、まず、(一)控訴人坂口徳治が昭和二七年一一月訴外沢井信蔵から本件家屋四棟を競落により取得すると共に、沢井信蔵が本件土地に対して持つていた賃借権を承継取得したものであり、右賃借権は土地所有者たる被控訴人等の承諾がなくても、当然被控訴人等に対抗し得るものであるし、控訴人白木及び川越は右土地占有権限を有する控訴人坂口徳治との間における前記家屋賃貸借に基いて家屋に居住し因つてその敷地を占有しているものであると抗弁するので考えるに、訴外沢井信蔵が被控訴人等の先代吉田藤吉から、本件土地を賃料一ケ月金六十円、期間昭和一六年一月三〇日より昭和四六年一月三〇日までの約定で賃借したこと、及び控訴人坂口徳治が昭和二七年一一月二六日本件土地上にある別紙目録記載の家屋四棟を沢井信蔵から競売により競落取得し同二九年二月八日その所有権取得登記をしたことは、当事者間に争のないところであるが、成立に争のない甲第二号証、第三号証の一乃至四第四号証、原審における被控訴人吉田カネ本人尋問の結果(第一回)により成立を認めることのできる甲第五号証の一、二、三当裁判所が真正に成立したと認める甲第六号証の一、二、原審における被控訴人吉田カネ本人尋問の結果(第一回)を綜合すれば、訴外沢井信蔵は賃借土地に対する昭和二三年一一月以降同二六年八月迄の賃料の支払をなさないため、賃貸人たる吉田藤吉は昭和二六年八月二五日沢井信蔵に対し延滞賃料を同年同月三一日限り支払うべく、もし右期日に支払わないときは土地賃貸借契約を解除する旨催告並びに条件附賃貸借契約解除の通知を発し、右はその頃沢井信蔵に到達したに拘らず沢井信蔵においてその支払をしなかつたため、沢井信蔵と吉田藤吉との間における本件土地賃貸借契約は、昭和二六年八月三一日限り解除となつたものであることが認められ、これを覆えすべき何んらの証拠もない。然らば、控訴人坂口徳治が本件地上にある家屋を競落取得したとしても沢井の本件土地賃借権がすでに消滅しているのであるから、これを承継取得すべきいわれがないのは勿論、仮に沢井の本件土地賃借権が末だ消滅しないものとし、控訴人坂口徳治が家屋を競落したことにより、沢井との関係において、その敷地たる本件土地賃借権をも承継したものと認むべきものであるとしても、これにつき土地賃貸人たる被控訴人等の承諾を得ない限り、その承継を以て被控訴人等に対抗することができないものといわなければならない。控訴人等は、家屋の競落人は、競落と同時に取得した敷地の賃借権を以て、土地賃貸人の承諾なくしてこれに対抗し得る旨主張するけれども、およそ賃借人は賃貸人の承諾がなければ、賃借権を譲渡し、または賃借物を転貸することができないのであつて、もし承諾を得ないで賃借権を譲渡しまたは賃借物を転貸しても、これを以て賃貸人に対抗し得ないのである。この理は、借地上にある家屋をその所有者が任意に他に売却すると同時に土地賃借権をも譲渡した場合たると該家屋が競落せられ、その競落と同時に土地賃借権の譲渡があつた場合たるとにより、その適用を異にすべきものではないから、控訴人等の右主張は到底これを採用することができない。従つて控訴人等の(一)の抗弁は理由がない。
(角村 菊池 吉田豊)